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はじめに
![](https://kozoandon.com/wp-content/uploads/2023/02/原料づくり.jpg)
こんにちは、侑布です♪
今回は「和紙の作り方を簡単に解説!」の
③になります。
注:一個人宅の小さな工房でのお話です。
使う道具や設備も、一人でできるレベルのもの。
それぞれの工場や工房でやる作業内容が
大きく違うこともございます。
どうぞその点を念頭に、ご参考までにどうぞ♪
さて、あなたはイベントや観光地で
『紙漉き(かみすき)』と呼ばれる
和紙作り体験を見たことがありませんか?
和紙の原料と水がはいった
大きな箱のような水槽と道具を使って
紙を作っていく作業が紙漉きです。
この『紙漉き』という作業は
和紙作りの中でももっとも有名な
工程の一つではないでしょうか。
何だか面白そうで
やってみたくなりますよね。
そしてこの「紙漉き」の作業よりも
紙を漉くまでの原料づくりや下準備に
多く時間を取られるのもまた事実です。
今回お伝えするのは
機械をほとんど使わない手作業での工程。
大きな紙漉き工房になると
漉く紙の量もとても多いため
立派な機械を導入していますが
まずはシンプルに
手作業での流れを早速見ていきましょう!
【和紙の作り方】流れを簡単に見てみよう 木の皮から原料を作るよ
![](https://kozoandon.com/wp-content/uploads/2023/02/晒し.jpg)
一晩つけておく感じですね。
皮の隅々まで十分に水を含むように
時々混ぜてしっかり水を吸わせます。
①晒し(川晒し)
保存しておいた楮の木の皮を
水に晒(さら)します。
②黒皮剥ぎ
![](https://kozoandon.com/wp-content/uploads/2023/02/黒皮.jpg)
黒皮の部分を剥(は)いでいきます。
とても薄いため剥ぐというよりは
こそぐといった方がいいですね。
ヘラのような道具を使って
こそいでいきます。
緑色の甘皮の部分は
紙の種類によって取ったり
そのまま使ったりしています。
仕上がりの紙の色が少し変わります。
剥いだ黒皮も和紙の装飾として使えます。
③煮熟(しゃじゅく)
![](https://kozoandon.com/wp-content/uploads/2023/02/煮熟中.jpg)
一晩水にさらしておいた木の皮を
大鍋で茹でます。
楮の木の皮の白い部分には
ペクチンという成分が含まれています。
ここからが今回のポイント!
さあこの煮熟の作業ですが
和紙づくりに使う楮の木の場合、
和紙の原料となるのは表皮と
中心部分の木質との間にある
靭皮という白い皮の部分です。
![](https://kozoandon.com/wp-content/uploads/2023/02/靭皮.jpg)
木の皮を剥いでみると
この白い靭皮はしっかりと硬いですよね。
ロープにもなりそうな強さがあるかと思います。
靭皮には「ペクチン」と少量の「リグニン」
いう成分が含まれています。
このペクチンとリグニンが繊維同志を
しっかりと接着させているのです。
それで強い皮となっているのですね。
和紙作りには1本1本バラバラになった
細かい繊維状のものがたくさん必要です。
このペクチンとリグニン成分を
除去してしまえば・・・
頑丈な木の皮を1本1本細かな
繊維状にすることができます。
ではどうやって除去する??
そこで登場するのがアルカリ溶液!
ペクチンとリグニンはアルカリ溶液の中だと
なんと水溶性の性質に変わるんですね。
そこに熱を加えるとさらにその力が強くなるため
繊維同士の接着が弱くなります。
だから煮熟する必要があるのですね。
こうしてアルカリ溶液で煮熟することにより
繊維が1本1本ほぐれて
頑丈な木の皮が
細かい繊維質に分かれていきます。
アルカリ溶液は数種類あります。
水に対して
苛性ソーダやソーダ灰を使ったり
木灰を使うことで
アルカリ溶液が作られます。
![](https://kozoandon.com/wp-content/uploads/2023/02/木灰.jpg)
このアルカリ溶液で
楮の木の皮をぐつぐつと煮熟する・・
ということになります。
湯で時間は2~3時間。
アルカリ溶液の種類や楮の皮の量で
湯で時間は変わります。
繊維がほぐれるようになればOK!
④晒し
今度はアルカリ性を含んだ木の皮を
流水ですすぎます。
アルカリ成分を除去していきます。
このすすぎもすごく大事で
アルカリ成分が残ってしまうと
できあがった紙の品質に大きく左右し
変色が出たりと困ったことになりますので
一昼夜しっかりと流水に晒します。
ペクチンとリグニンは
煮たことで水溶性になっていますので
そのあとに水に晒しておくと
さらに木の繊維同志の接着が
取れていくという・・
なんとも本当によくできています!
アルカリ成分をしっかりと流し、
繊維同志の接着をさらに取っていく
という工程になります。
![](https://kozoandon.com/wp-content/uploads/2023/02/苛性ソーダ.jpg)
⑤ちり取り
ちり・ゴミ・皮についている節などの
不純物を取り除いていきます。
これを塵(チリ)取りというのですが
この作業が一番根気がいると思います。
黙々とピンセットで取り除きます。
⑥叩解(こうかい)
木の皮を1センチほどに切ってから
木の棒で叩いていきます。
※叩解機といって
大きくて立派な機械もあります。
この叩解をすることで
まだ少し固まっている繊維が
さらにしっかりとほぐれていきます。
![](https://kozoandon.com/wp-content/uploads/2023/02/楮の繊維.jpg)
木の皮がここまできてようやく
たくさんの細かい繊維となって
紙の原料となります。
【和紙の作り方】流れを簡単に見てみよう「ねり」という原料を作るよ
![](https://kozoandon.com/wp-content/uploads/2023/02/トロロ入浴後.jpg)
木の皮の加工を進めながら
「ねり」の準備もしていきます。
トロロアオイという植物の根っこをつぶして
一晩置いておくと
粘り成分がたくさん抽出されます。
それが「ねり」と呼ばれるもので
和紙作りの大事な原料のひとつです。
ねりはトロロアオイの他にも
ノリウツギという植物の皮や
青桐(あおぎり)という植物の根からも
採取することができます。
「ねり」は糊のイメージがありますが
接着力は全くありません。
【和紙の作り方】流れを簡単に見てみよう ようやく紙漉きができるよ
![](https://kozoandon.com/wp-content/uploads/2023/02/すけた.jpg)
⑧ 紙漉き
叩解が済んだ繊維とねりと水を
漉き舟(水槽のようなもの)に入れます。
原料が均一になるように
棒を使ってよく攪拌させます。
簀桁(すけた)という道具を使って
紙を漉いていきます。
簀桁(すけた)の簀(す)は
すだれのような作りになっています。
簀桁(すけた)を使って
漉き船から繊維とねりの
混ざった水を漉くい取ると
その簀(す)の隙間から水が落ちていき
簀桁(すけた)の上に繊維だけが残り
それを乾かすと紙になる・・・
という仕組みです。
紙漉きには
「流し漉き」と「溜め漉き」が
ありますが
「流し漉き」については
熟練の技が求められます。
職人さんがされる「流し漉き」は
とても美しく素晴らしく
まさに伝統工芸!
一見の価値が十分にありますよ!
よくワークショップなんかで
子どもたちが紙漉き体験を
行っているところでは
「溜め漉き」が多いと思います。
⑨乾燥
![](https://kozoandon.com/wp-content/uploads/2023/02/乾燥.jpg)
漉いたばかりの紙はびしょ濡れの状態です。
水分を切ってから乾燥させます。
板干しといって
板に紙を貼りつけて
天日で乾燥させる方法や
大きなスチームを使った鉄板の上で
効率よく乾燥させる方法などあります。
乾燥させた和紙を隅の方から
めくっていくと
純手漉き和紙の完成です!
おわりに
![](https://kozoandon.com/wp-content/uploads/2023/02/こうぞがみ.jpg)
いかがでしたか?
ここまでちょっと駆け足でしたが
和紙のつくり方について
流れを簡単に解説してきました。
江戸末期から昭和初期にかけて
最も大量に手漉き和紙が
漉かれていた時代を経て
効率よくたくさん紙を
漉いていくための工夫を
どこの工房も研鑽されていました。
和紙工房によって
使っている道具も工程も違いますから
一枚の紙が出来上がるまでに
かかる時間も様々です。
品質を守りながら
色々な工夫を凝らして
全国各地で昔ながらの紙づくりが
まだまだ行われています。
あなたの住む街の近くにも
伝統的な和紙作りが
残っているかもしれません。
素材として魅力的な手漉き和紙、
自分だけの紙を作ることも可能です。
実際に私も自分だけの紙づくりに
挑戦しています。
興味があれば是非
手漉き和紙に挑戦してみてくださいね!