こんにちは。ちぎりちぎり侑布です♪
トロロアオイは植物です。
和紙を作るために必要で重要な役割を担うのが
このトロロアオイという植物。
「とろろ・・」という名前からして
ねばねばしてそうな感じがしませんか?
はい、とてもわかりやすいですね、
実は紙漉きに重要なのが水と相性の良い天然のねばねばの成分。
トロロアオイを栽培して収穫した根からは
この大事なねばねばがたくさん取れるのです。
トロロアオイの特性を生かした先人の知恵には本当に驚かされます。
紙漉きとトロロアオイのねばねばについてまとめてみました。
Contents
トロロアオイ栽培記 トロロアオイってこんな植物!【和紙の原料】
アオイ科トロロアオイ属の中国原産の植物
漢字表記では 土呂呂葵
別名 花オクラとも呼ばれています。
オクラの花や実と似ているからだそうです。
一年草で高さは1mから1.5mほどに成長します。
そしてこのトロロアオイ、
なかなか見事な大輪の花を咲かせるのですが、
この花の部分も食べれるというから驚きです。
食卓によく登場するあの食用のオクラ。
トロロアオイの実の形や花もオクラにとてもよく似ています。
そこから花オクラという別名があるようですが、
オクラとは違う植物です。
オクラの実は美味しく食べれますが
トロロアオイの実は食用には向きません。
(大きくなる前のとても若い実の時はまだ食べやすい)
オクラとよく似た花を咲かせますが
トロロアオイの花はハイビスカスのように大きな花です。
オクラもねばねばしていますよね、
このトロロアオイも実も花も粘り気があります。
もちろん一番ねばねばを含んでいるのが根っこの部分で
紙漉きで使う重要な素材ということになります。
さらに面白いことに
トロロアオイの花は一日しか咲きません。
朝咲いて夕方にはしぼみ、夜にはポトッと落ちてしまう・・
食べるタイミングを外さないのか?と心配になりそうですね。
見事な花を咲かせるため観賞用としても育てられますが、
一日しか咲かないために市場に流通することはほぼないようです。
なるほど納得、なかなか面白い特性を持っている植物ですね。
トロロアオイ栽培記 紙漉きでの重要な役割がある?【和紙の原料】
さあこのトロロアオイ、
紙漉きでは大変重要な役割を担っております。
ずばり「ねり」を採るためにトロロアオイは栽培されます。
この「ねり」とは何ぞや??
はい、「ねり」とは業界用語になりまして、
トロロアオイの根の部分から採れるねばねばの成分、
これを「ねり」と呼んでいます。
トロロアオイの根をこん棒のようなもので叩いていくと
透明なドロドロとした液状のものがどんどん溢れ出てきます。
これが「ねり」と呼ばれ長い時代和紙作りには欠かせない材料として
活躍してきました。
実際の使い方を見ていきましょう。
「ねり」を使う前の段階から少し説明していきます。
紙を漉くにあたってまず
和紙の原料となる楮(こうぞ)を収穫して皮を剥ぎ、
この皮の部分を集めてさらに加工していきます。
煮たり晒したり叩いたりしながら
木の皮の繊維を細かくしていきます。
和紙をよく見ると小さな繊維が不規則に、でも均衡をとって
密集しているのがわかりますよね。
木の皮の繊維を細かくして
ようやく和紙の原料が出来上がります。
この原料を漉き舟に入れ水をたくさん入れます。
紙漉きの光景で良く見られる水の張った漉き舟ですね。
そこに楮(こうぞ)を加工して出来上がった原料を入れて混ぜます。
それから両手で抱える簀桁(スケタ)という道具を使って
漉き舟から漉くい取る作業を何度か繰り返して
紙の繊維がスゲタに残って和紙が出来上がるという
ざっくり言うとそんな流れで繊維が紙となっていきます。
さて、たくさんの水と原料を混ぜたこの漉き舟、
時間が経つとどうなるでしょう?
そうです、水と原料が分離していくのです。
棒で攪拌したところで
和紙の原料である木の皮の繊維たちは
静かに水の底に沈んでいくのです。
上澄みは水しかない状態になってしまいます。
これでは紙を均一に漉くことができません。
そこでようやくこの「ねり」が登場します。
トロロアオイの根を叩いて抽出される
透明のねばねばした液状のもの、
それが「ねり」です。
紙漉きとトロロアオイ 「ねり」の存在が重要なワケ!【和紙の原料】
さあ漉き舟にたくさんの水と原料である繊維を入れました。
そこにこの抽出したねりを投入します。
そして棒でよく混ぜます。
そうすると漉き船の中は
どんな状態になると思いますか?
ねりは水との相性が素晴らしく、
適度な粘度が漉き舟の水にとろみを与えます。
この天然のとろみは固まることなく大変滑らかな状態で
手で漉くってみても指の間からするりと気持ちよく流れ落ちていきます。
原料である木の皮の繊維は
絶妙な間隔で水の中を優しく浮遊しています。
そう、例えるならば宇宙遊泳!
繊維たちは漉き舟の海の中で無重力状態のように
見事にちょうどよい間隔で浮遊するのです。
紙を漉く道具として、簀桁(スケタ)という道具が登場します。
この簀桁(スケタ)の大きさで紙の大きさが決まるのですが、
両手で抱えるこの簀桁(スケタ)は一面すだれのような状態になっており、
その隙間から水が下に落ちていく仕組みになっています。
簀桁(スケタ)で漉くえば水とねりが下に落ちていき、
簀桁(スケタ)の上には不規則だけど均衡のとれた繊維たちが残り
それが一枚の紙となっていく・・というわけですね。
よくできてるなーといつも漉き船に手を入れたときに思うのですが、
トロロアオイから抽出されるねばねば成分の「ねり」は
漉き船の中で原料である繊維を
絶妙に良い塩梅に散らせてくれる凄いやつ!なのです。
さいごに
トロロアオイ、いかがだったでしょうか。
トロロアオイという植物の説明でも
「和紙を作る時の糊として使う・・」と表記されていることもしばしばありますが、
決して糊ではなく、ねり自体に接着する性質はありません。
ねばねばはしても接着はしないということです。
糊の性質は必要なく、漉き船の水を適度なとろみにしてくれればよいのです。
トロロアオイ以外でもねりの役割となる植物が存在しますが、
ねりの役割が理解できれば自分でも何となく使えそうな素材を思いつくことができますよね。
例えば食用のオクラもかなりのねばねば成分が実から採れるわけですし
ちゃんと紙が作れます。
和紙作りには欠かせないトロロアオイですが
紙を漉くという作業の中では
自然の利を最大限に活かしていることに驚かされるばかりです。
この自然と共存してきた大切な関わり合いの一部に
私自身が組み込まれていることも大変うれしく思いますし、
手間暇かかる一連の流れを大切にしていきたいと思います。
トロロアオイ、この後もたびたび出てくるとは思いますが、
次回は実際に種から育てていく過程のお話。
どうぞまた良ければお付き合いくださいね。