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はじめに
こんにちは、侑布です♪
今回は「和紙の作り方を簡単に解説!」の
③になります。
注:一個人宅の小さな工房でのお話です。
使う道具や設備も、一人でできるレベルのもの。
それぞれの工場や工房でやる作業内容が
大きく違うこともございます。
どうぞその点を念頭に、ご参考までにどうぞ♪
さて、あなたはイベントや観光地で
『紙漉き(かみすき)』と呼ばれる
和紙作り体験を見たことがありませんか?
和紙の原料と水がはいった
大きな箱のような水槽と道具を使って
紙を作っていく作業が紙漉きです。
この『紙漉き』という作業は
和紙作りの中でももっとも有名な
工程の一つではないでしょうか。
何だか面白そうで
やってみたくなりますよね。
そしてこの「紙漉き」の作業よりも
紙を漉くまでの原料づくりや下準備に
多く時間を取られるのもまた事実です。
今回お伝えするのは
機械をほとんど使わない手作業での工程。
大きな紙漉き工房になると
漉く紙の量もとても多いため
立派な機械を導入していますが
まずはシンプルに
手作業での流れを早速見ていきましょう!
【和紙の作り方】流れを簡単に見てみよう 木の皮から原料を作るよ
一晩つけておく感じですね。
皮の隅々まで十分に水を含むように
時々混ぜてしっかり水を吸わせます。
①晒し(川晒し)
保存しておいた楮の木の皮を
水に晒(さら)します。
②黒皮剥ぎ
黒皮の部分を剥(は)いでいきます。
とても薄いため剥ぐというよりは
こそぐといった方がいいですね。
ヘラのような道具を使って
こそいでいきます。
緑色の甘皮の部分は
紙の種類によって取ったり
そのまま使ったりしています。
仕上がりの紙の色が少し変わります。
剥いだ黒皮も和紙の装飾として使えます。
③煮熟(しゃじゅく)
一晩水にさらしておいた木の皮を
大鍋で茹でます。
楮の木の皮の白い部分には
ペクチンという成分が含まれています。
ここからが今回のポイント!
さあこの煮熟の作業ですが
和紙づくりに使う楮の木の場合、
和紙の原料となるのは表皮と
中心部分の木質との間にある
靭皮という白い皮の部分です。
木の皮を剥いでみると
この白い靭皮はしっかりと硬いですよね。
ロープにもなりそうな強さがあるかと思います。
靭皮には「ペクチン」と少量の「リグニン」
いう成分が含まれています。
このペクチンとリグニンが繊維同志を
しっかりと接着させているのです。
それで強い皮となっているのですね。
和紙作りには1本1本バラバラになった
細かい繊維状のものがたくさん必要です。
このペクチンとリグニン成分を
除去してしまえば・・・
頑丈な木の皮を1本1本細かな
繊維状にすることができます。
ではどうやって除去する??
そこで登場するのがアルカリ溶液!
ペクチンとリグニンはアルカリ溶液の中だと
なんと水溶性の性質に変わるんですね。
そこに熱を加えるとさらにその力が強くなるため
繊維同士の接着が弱くなります。
だから煮熟する必要があるのですね。
こうしてアルカリ溶液で煮熟することにより
繊維が1本1本ほぐれて
頑丈な木の皮が
細かい繊維質に分かれていきます。
アルカリ溶液は数種類あります。
水に対して
苛性ソーダやソーダ灰を使ったり
木灰を使うことで
アルカリ溶液が作られます。
このアルカリ溶液で
楮の木の皮をぐつぐつと煮熟する・・
ということになります。
湯で時間は2~3時間。
アルカリ溶液の種類や楮の皮の量で
湯で時間は変わります。
繊維がほぐれるようになればOK!
④晒し
今度はアルカリ性を含んだ木の皮を
流水ですすぎます。
アルカリ成分を除去していきます。
このすすぎもすごく大事で
アルカリ成分が残ってしまうと
できあがった紙の品質に大きく左右し
変色が出たりと困ったことになりますので
一昼夜しっかりと流水に晒します。
ペクチンとリグニンは
煮たことで水溶性になっていますので
そのあとに水に晒しておくと
さらに木の繊維同志の接着が
取れていくという・・
なんとも本当によくできています!
アルカリ成分をしっかりと流し、
繊維同志の接着をさらに取っていく
という工程になります。
⑤ちり取り
ちり・ゴミ・皮についている節などの
不純物を取り除いていきます。
これを塵(チリ)取りというのですが
この作業が一番根気がいると思います。
黙々とピンセットで取り除きます。
⑥叩解(こうかい)
木の皮を1センチほどに切ってから
木の棒で叩いていきます。
※叩解機といって
大きくて立派な機械もあります。
この叩解をすることで
まだ少し固まっている繊維が
さらにしっかりとほぐれていきます。
木の皮がここまできてようやく
たくさんの細かい繊維となって
紙の原料となります。
【和紙の作り方】流れを簡単に見てみよう「ねり」という原料を作るよ
木の皮の加工を進めながら
「ねり」の準備もしていきます。
トロロアオイという植物の根っこをつぶして
一晩置いておくと
粘り成分がたくさん抽出されます。
それが「ねり」と呼ばれるもので
和紙作りの大事な原料のひとつです。
ねりはトロロアオイの他にも
ノリウツギという植物の皮や
青桐(あおぎり)という植物の根からも
採取することができます。
「ねり」は糊のイメージがありますが
接着力は全くありません。
【和紙の作り方】流れを簡単に見てみよう ようやく紙漉きができるよ
⑧ 紙漉き
叩解が済んだ繊維とねりと水を
漉き舟(水槽のようなもの)に入れます。
原料が均一になるように
棒を使ってよく攪拌させます。
簀桁(すけた)という道具を使って
紙を漉いていきます。
簀桁(すけた)の簀(す)は
すだれのような作りになっています。
簀桁(すけた)を使って
漉き船から繊維とねりの
混ざった水を漉くい取ると
その簀(す)の隙間から水が落ちていき
簀桁(すけた)の上に繊維だけが残り
それを乾かすと紙になる・・・
という仕組みです。
紙漉きには
「流し漉き」と「溜め漉き」が
ありますが
「流し漉き」については
熟練の技が求められます。
職人さんがされる「流し漉き」は
とても美しく素晴らしく
まさに伝統工芸!
一見の価値が十分にありますよ!
よくワークショップなんかで
子どもたちが紙漉き体験を
行っているところでは
「溜め漉き」が多いと思います。
⑨乾燥
漉いたばかりの紙はびしょ濡れの状態です。
水分を切ってから乾燥させます。
板干しといって
板に紙を貼りつけて
天日で乾燥させる方法や
大きなスチームを使った鉄板の上で
効率よく乾燥させる方法などあります。
乾燥させた和紙を隅の方から
めくっていくと
純手漉き和紙の完成です!
おわりに
いかがでしたか?
ここまでちょっと駆け足でしたが
和紙のつくり方について
流れを簡単に解説してきました。
江戸末期から昭和初期にかけて
最も大量に手漉き和紙が
漉かれていた時代を経て
効率よくたくさん紙を
漉いていくための工夫を
どこの工房も研鑽されていました。
和紙工房によって
使っている道具も工程も違いますから
一枚の紙が出来上がるまでに
かかる時間も様々です。
品質を守りながら
色々な工夫を凝らして
全国各地で昔ながらの紙づくりが
まだまだ行われています。
あなたの住む街の近くにも
伝統的な和紙作りが
残っているかもしれません。
素材として魅力的な手漉き和紙、
自分だけの紙を作ることも可能です。
実際に私も自分だけの紙づくりに
挑戦しています。
興味があれば是非
手漉き和紙に挑戦してみてくださいね!