こんにちは。ちぎりちぎり侑布です♪
「細川紙」(ほそかわがみとも呼ばれる)
という名前の和紙をご存じですか?
ユネスコ無形文化遺産の登録で
世界的に有名になった「細川紙」
「細川紙」というくらいなので、
地名がそうなのかと思いきや、
生産地の地名は
「小川町」と「東秩父村」
なんですね。
埼玉県の小川町と東秩父村で
この「細川紙」という和紙が
伝承され、
今も昔ながらの製法を守って
作られています。
シリーズ【和紙と歴史】
今回は「細川紙」について
見ていきたいと思います。
Contents
細川紙の産地と歴史「小川町」「東秩父村」はどんなところ?
日本各地の和紙の有名どころは
今の地名だったり、昔の地名だったり、
地名がそのまま和紙の名前に
なっていることが多いですよね。
私の住む福岡県なら
八女市の八女手すき和紙。
ユネスコ無形文化遺産に登録された
岐阜県美濃市の美濃和紙。
同じく、
ユネスコ無形文化遺産に登録された
島根県西部の石見(石州)地方の
石州半紙。
高知県なら土佐和紙など。
という具合に、
地名と和紙名が同じなので
わかりやすいのですが
この細川紙に関しては
そうではありません。
そしてまた、
そうでないこともないのです。
おまけに細川紙は
小川和紙なのです。
???
これは少し伝わりにくいところが
ありますよね。
ちょっと伝わりにくくて
モヤモヤする・・
これは本当にもったいない!
今私の手元にも
細川紙があるのですが、
この素晴らしい細川紙について、
歴史を紐解きながら
少し学んでみたいと思います。
手漉き和紙「細川紙」の産地① ~ 埼玉県・小川町
細川紙の産地である、
埼玉県比企郡小川町。
人口は約27,000人。
埼玉県の中央部に位置し、
外秩父山地に囲まれた小川盆地に
市街地があります。
江戸から埼玉県川越市を抜けて
秩父に向かう「街道」が
小川町の東西に抜けていて
この立地から古くは六斎市が賑わい
この地の商業中心となっていました。
※六斎市とは、
室町時代から江戸時代にかけて
月6回開催されていた定期市、
市場のことです。
また小川町は
外秩父の山と清らかに流れる清流槻川
の環境の元、
歴史ある小川和紙をはじめ、
酒造や建具、
そして小川絹も有名でした。
絹、つまり養蚕・絹織物業も
とても盛んだったのですね。
明治21年に建築された
「養蚕伝習所」という建物が
国指定登録有形文化財
に指定されています。
小川町には5つの
国指定登録有形文化財が
現存しています。
地理的、歴史的、伝統的に
「武蔵の小京都 小川町」
と呼ばれ、
全国京都会議委加盟しています。
もうたくさんの魅力があり過ぎて
今回は和紙繋がりで
深堀してみた小川町ですが、
全然語りつくせないですし、
もっとPRしていいのでは??
とおせっかいに思うくらい、
歴史・伝統の宝庫です、本当に!
さて、和紙の話に移りますが、
この自然豊かな山々に囲まれた
小川盆地、
そこに流れる清流、槻川や兜川。
この山と川の立地条件が
まさに紙漉きにとても適していました。
小川町周辺では
古くから和紙作りが盛んで、
「細川紙」が登場する以前から
紙漉きが盛んに行われていました。
和紙の歴史は古く、
1300年と言われています。
ここで作られる和紙を
「小川和紙」と呼び、
小川和紙の中でも、
楮(こうぞ)だけを使用した
厳選された素材の和紙が
「細川紙」と呼ばれています。
ようやく
小川和紙と細川紙の関係性が
わかってきました。
小川町には
和紙体験学習センターがあります。
ここでは
手漉き和紙の体験や施設の見学ができ、
地元の楮(こうぞ)を使った
本格的な和紙漉き体験ができます。
和紙が出来るまでの加工・製造現場が
そのまま見学できますので
とても参考になります。
昭和11年に建設された
和紙研究施設をそのまま使っていますから
建物を見学する価値もあります。
和紙漉き体験では、
楽しく体験できる入門コースと、
座学で原料から詳しく学べる
本格体験コースも用意されています。
とても興味深いところ・・
事前に確認しておきましょう。
↓小川町ホームページ
観光・イベントのタブを開くと
和紙についての詳細がわかります。
http://www.town.ogawa.saitama.jp/
注:↑こちらは小川町が許可している
リンク先です。(HPに記載あり)
また、8月には
小川町七夕まつりが開催されています。
手漉き和紙「細川紙」の産地② ~ 埼玉県・東秩父村
細川紙のもう一つの産地である
「東秩父村」
埼玉県秩父郡東秩父村
人口約2,700人
埼玉県唯一の村。
小川町を流れる槻川の上流に位置する
東秩父村。
秩父郡に属していますが、
秩父盆地の山を隔てて東側になり、
行政区で見ると、秩父地方でなく、
比企郡の自治体と隣接していることから
比企圏域に属するようです。
なるほど・・。
小川町とは槻川繋がりで
お隣同士になる市町村です。
東秩父村も美しい自然に恵まれて
古くから和紙漉きが盛んです。
豊かな自然と奇麗な水で、
槻川繋がりでもあることから
小川町同様に
伝統ある細川紙を漉かれています。
地図上で確認してみると
槻川の上流に東秩父村、
下流に小川町の位置付けとなっており
なるほど、槻川を中心に
この細川紙が伝承されてきたことが
よくわかります。
私が和紙探索の旅に出るなら
当然、小川町と東秩父村を
両方廻りますね~!
川沿いに車を走らせるだけでも
本当に癒される感じですから
いつか必ず訪ねたいところです。
東秩父村 和紙の里
平成28年に、
「道の駅 和紙の里ひがしちちぶ」
がオープンしました。
こちらはまた見どころたくさん。
道の駅ですから
特産品も販売されていますし、
和紙の製造所の見学や
ワークショップも開催、
茅葺き屋根の紙漉き家屋がある
日本庭園もあり
訪れた人々がゆっくりと
時間を過ごせるようになっています。
研修会館や宿泊施設、
ギャラリーもありますし、
「ふるさと文化伝承館」という
東秩父村の伝統文化を紹介する施設で
伝統ある展示物を鑑賞できます。
またお腹がすいたら
本格手打ちのうどん・そばや
フードコートもあります。
東秩父村に家族で出かけて
自然をたくさん満喫、
そして歴史や郷土史を学び、
紙漉き体験し、
美味しい農産物を買って帰る。
そんな盛りだくさんの
スーパー道の駅ではないでしょうか。
ここで東秩父村の村長さんの言葉が
印象に残りましたので
ご紹介したいと思います。
「本村は清流と四季折々の花々に囲ま
れた自然豊かな地として現在も四季を
問わず多くの人々が訪れます。
村の観光名所となっている
「東秩父村和紙の里」は、
紙漉きの見学や紙漉き体験をとおして
和紙の魅力を存分に味わえますので、
東秩父村にぜひお越しください。」
もう~!
こんなコメントを見つけてしまうと
ますます行きたくなりますね。
※これは東秩父村のHP、村長の部屋に
「細川氏」:ユネスコ無形文化遺産登録決定を受けて・・に
掲載してある文言です。
「東秩父村公式観光サイト」が
とても見やすいです。
是非チェックしてみてくださいね♪
小川和紙の歴史と伝統
小川和紙は、その歴史を遡ると
古代にまでさかのぼります。
1300年と言われていますから、
この地域では、
古くから豊かな自然環境と共に、
和紙の原料となる植物が
豊富に育つ土地でした。
約千年以上前、地元の職人たちが
この地の利を活かし、
和紙製造の技術を始めました。
和紙の製造は、厳しい手仕事と
独自の技術が結びついたものでした。
植物繊維を丁寧に取り出し、
水で漬けて柔らかくし、
10にもなる工程を経て丁寧に
細かな手作業で
和紙を作り上げていきました。
これらの伝統技術は、
時が経っても受け継がれ、
進化してきました。
この伝統技術の息吹が、
小川和紙の原点であり、
歴史の重みを感じさせます。
これから未来に向けても
守り続けられることでしょう。
小川和紙は、古代の知恵と
現代の技術が調和した、
日本の伝統工芸の粋を集めた
素晴らしい存在と言えるでしょう。
もっと知ってもらいたい!と
強く思います。
小川和紙代表格「細川紙」・ユネスコ無形文化遺産登録の背景
小川和紙の中でも
超エリートに属するのが
「細川紙」といったところでしょう。
ユネスコ無形文化遺産登録になったのは
小川和紙の中の細川紙であって
小川和紙ではない。
いやいや、作ってるのは小川和紙。
ちょっとややこしいですね。
そしてもうひとつ、
細川紙の由来は
細川氏と関係あるのでは??
と私は本気で思っていました。
あの歴史上の人物、
室町時代あたりの大名、
細川家です。
そのあたりも見ていきましょう♪
「細川紙」の名前の由来と紙の特徴
小川和紙は小川町周辺で漉かれてきた
和紙の名前ですが
「細川紙」の名前の由来はどうでしょうか。
紀州高野山の細川村という所で
(今の和歌山県高野町になります。)
漉かれていた細川奉書という紙の技術
が、江戸時代に小川町に入ってきたと
言われています。
地名と言えば地名ですが
よその地名ですよね。
また、元々小川周辺で漉かれていた紙
が細川紙に似ていたことから、そう呼
ばれるようになった・・とも言われて
いるようです。
断定はされていません。
そして細川家との関りは??
これは残念、
歴史上の人物、細川氏とも
全く関係ないようです。
細川紙の特徴
国産の楮(こうぞ)のみを原料とした
伝統的な手漉き和紙です。
未晒しの純楮紙は、大変強靭で
素朴で優しい風合いでつややかな光沢もあり、
紙の表面は毛羽立ちにくいことが特徴です。
全国にまだまだ和紙工房がありますが、
和紙は自然の原料、自然の産物。
同じ和紙は作れないのです。
地域の特徴や、
それぞれの工房の味わいが現れます。
見た目に優しい生成り色のような
何とも言えない温かさがありますね。
この細川紙は
昭和53年に国の重要文化財に指定。
素晴らしい伝統工芸です、
この重要文化財や県指定の伝統工芸に
指定されるということは
厳選された素材を使うこと、
製法や分量を均一に守り
伝統的な製法を用いることが
条件としています。
つまり、重要文化財に指定された時の
製法をしっかりと守っていかなければ
ならないということ。
そのやり方で指定されたわけですから。
それは大変名誉なことですが、
やはり伝統の重み、大変さも
並大抵のことではないかと思います。
ユネスコ無形文化遺産登録の快挙!
先ほど重要文化財に指定されたお話を
少ししました。
重要文化財だけでも大変な名誉ですが
その後の平成26年11月27日、
「和紙:日本の手漉和紙技術」として
ユネスコ無形文化遺産登録決定という
大快挙を成し遂げたのです!
世界に認められたわけです。
ユネスコに登録された「細川紙」は
小川和紙の中の代表的な紙という
位置づけです。
小川和紙の中のひとつが
細川紙でしたね。
和紙は用途によって
色んな製法や特徴があります。
和紙の原料だけを見ても
楮(こうぞ)という木の繊維を
100%使うこともあれば
他の繊維も混ぜて使うこともあります。
細川紙に関しては
国産の楮を100%使用という条件の元
紙が漉かれています。
昔ながらの紙ができるまでの工程、
その間行う作業内容、
使う薬品(自然由来)や材料、
これら全部を細かく、
そしていつも同じものができるように
同じ分量やなるべく同じ気象下の元、
伝統的な製法を守ること
に重きを置かねばなりません。
一枚の紙を漉くために
大変な努力と積み重ねがあるのです。
ユネスコ世界文化遺産登録の影響と今後の期待
小川町・東秩父村の和紙「細川紙」が
ユネスコ無形文化遺産に登録
されたことは、
地域の和紙産業に大きな影響を
与えています。
まず、この登録により小川和紙は
国際的な注目を集め、
世界中の和紙愛好者やアーティストに
アクセスする機会が増えました。
私のような九州の片田舎の一作家も
ユネスコに登録された紙となると
興味津々なのです。
「どんな紙だろう?
機会があれば是非使ってみたい。」
これにより、地域経済への
プラス効果が当然期待されています。
登録の影響は、
単なる経済的なものだけでなく、
地元の和紙職人やアーティストたちに
大きな自信と誇りを与えました。
伝統工芸としての価値が、
国際的に認められたことで、
新たな才能が育まれ、
若い世代も和紙産業への参加を積極的
に考えるようになっています。
また、地域振興としての側面も強調
されています。
小川町や東秩父村では、
観光地としての魅力を一層高め、
和紙製造のプロセスを体験できる
ツアーやイベントが増加しています。
これにより、
地元の文化や歴史を訪れる人々に伝え
る機会が増え、
地域社会全体が盛り上がっています。
今回、「細川紙」で色々と調べていく
だけでも
小川町と東秩父村の魅力が伝わり、
「行ってみたい~~!!!」と
気持ちが爆発していますから。
これからも伝統と革新が融合した
新たな発展を遂げ、
世代を超えて受け継がれていくこと
でしょう。
伝統文化がかかえる課題と未来への継承・保存
和紙の業界に限らず
日本古来の様々な伝統文化は
いつかは廃れてしまうかもしれない
という危機感を抱えています。
新しい文化や技術が入ってくることで
時代の流れとともに
需要が大幅に減っていくところに
昔ながらのやり方で継承してく難しさ
があると思います。
そんな厳しい面がある中でも
伝統的な技術を守りながら
研鑽を重ねる日々の業務とはまた別に
正しい形で残していくこと。
一人の力では難しいですが
地域で協力しながら
伝統・技術を継承していくこと。
その活動に尽力されている方々も
全国にたくさんいらっしゃいます。
和紙業界が抱える現状と課題
全国的に見ても
和紙業界は衰退の一途を辿っている
厳しい現状があります。
江戸から明治にかけての
洋風文化の到来により
時代は大きく変わりました。
さらに昭和に入ると
和紙だけの問題ではなく
紙にとって替わるプラスチックが出現します。
今はどこの家庭でも
ゴミを分別していると思いますが、
分別して気が付くのが
燃えるゴミと同じくらい、
いやそれ以上に
プラスチックごみが増えているのです。
大きく落ち込んでしまうことになった
「紙」そのものの需要。
そして需要の問題だけではなく、
原材料の生産の難しさ(後継者不足)
和紙職人の後継者不足。
これは一工房では対応できない、
解決できない深刻な問題です。
地方自治体の協力なくしては
和紙業界の産業の復興は
本当に険しい道だと思います。
新しい活路を見出す必要も
当然あります。
それでも・・
和紙の素晴らしさを何とか残せないか
手漉き和紙を手に取って触って
感じてみると
その美しさに大変価値のあることに
気が付くと思います。
「よくこんな美しい紙を
植物と、木製の道具と手仕事だけで
作り上げてきたものだ・・」
と、よく感心したものです。
「残していかないといけない」
全国の和紙工房や和紙職人さんも
アートと融合した新商品の開発や
認知度を上げるためのPR活動、
他にも様々な取り組みをしています。
また、海洋汚染はじめ自然界における
プラスチックごみの悪影響が
世界的に問題となっています。
身近なところでは
プラスチック製のストローが
紙に変わるなど、
紙の良さが見直されています。
時代の流れはまた
紙にとっての大きな味方になる日が
来ることに期待したいです。
未来への継承と保存 ~ 細川紙技術者協会(保存会)
埼玉県比企郡小川町及び
秩父郡東秩父村で伝承されている
重要無形文化財「細川紙」を、
次世代に継承し、
その技術の向上と保存を目的とした
活動に取り組んでいます。
すごいことだと思います。
戦後、紙漉きが激減する中で、
手漉き和紙の技術者が集まり、
細川紙技術保存会を結成、
(今の細川紙技術者協会のこと)
その後、重要無形文化財に指定され、
平成26年にユネスコ無形文化遺産に
登録されたという沿革があります。
【細川紙の要件】
以下の条件を守り、
「細川紙技術者協会」の検査に
合格したものを
「重要無形文化財細川紙」と呼ぶ
以下の条件がこちらです。
1.原料は、楮(こうぞ)のみ。
2.伝統的な製法と製紙用具(紙漉き
の道具ですね。)によること。
①白皮作業を行い、煮熟には草木
灰またはソーダ灰云々
②薬品漂白は行わなず〇〇〇〇〇。
③叩解は手打ち、またはこれに準
じた方法云々
④抄造は「ねりにトロロアオイを
用い・・〇〇〇
⑤板干し、または鉄板による乾燥
・・・云々
注:東秩父村のHPより一部抜粋
(詳細ご確認ください)
ユネスコ無形文化遺産登録という大変
名誉なことですが、
技術者も少なくなっている中で、
互いに協力しながらこの素晴らしい
「細川紙」を後世に伝えていくという
重責を担っているのです。
おわりに
和紙と歴史シリーズ
今回は埼玉県の「細川紙」に
スポットを当ててみました。
小川町と東秩父村。
お隣同士の市町村ですから
関東圏にお住いの方は
遊びに出かけてみませんか?
そして是非、
本物の手漉き和紙を手に取ってみて
その美しさを堪能していただくと
とっても嬉しいです♪
また次回、
素敵な和紙をご紹介したいと思います。
ではまたお会いしましょうね♪